2020年
独立したのが2010年ですから、それから丸10年が経ちました。独立したての頃は兼行法師の「徒然草」にあやかって「つれづれ」を数字の「2020」になおし、2020製陶所(にまるにまるせいとうじょ)という屋号で活動していたので、最近、数字の「2020」を目にしたり、「にまるにまる」と耳にしたりすると、なんだか自分が呼ばれているような気がしてつい反応してしまいます。
2007年からの約2年半は、佐賀県の有田で焼き物の勉強をしていたのですが、その頃、長崎市の外海地区にある遠藤周作文学館に訪れたのがきっかけで、作家の代表作である「沈黙」を読みました。
それから10年以上経った今年に入って、マーティン・スコセッシ監督の「沈黙」が無性に観たくなり、映画を観る前に文庫を取り出してもう一度作品を読んでみました。
「沈黙」は、キリスト教が弾圧されていた時代の日本に潜入、隠れて布教を試みていたポルトガルの司祭が捕らえられ、日本人信徒の受ける拷問の前で棄教を迫られる物語ですが、この司祭を含めた主要な登場人物には実際にモデルが存在していて、当時の現実に近い物語なのだと思います。
さて、小説を読み終えた勢いで映画を観た感想ですが、ひとことで言うと傑作だと思いました。映像により私の持っていた物語のイメージを補完してもらい、「沈黙」に対する理解度がより一層深まりました。本当に映像化に感謝です。個人的には、日本人信徒を演じた窪塚洋介と塚本晋也の好演が心に残りました。
次は映画を観終えた勢いで、昔、古本屋で買った「芸術新潮」の沈黙特集を読み直し、「沈黙」秘話が書かれた遠藤周作著「沈黙の声」も新たに購入。
スコセッシ版から遡ること45年の1971年には篠田正浩監督が「沈黙」を製作していたことも知ったので、機会があればこちらも是非観てみたいと思いました。しばらく「沈黙」熱は冷めそうもありません。
ちなみに、私の祖父母は今でも潜伏キリシタン(隠れキリシタンは俗語だそうです)の子孫が多く住む長崎県の生月島というところで先生をしていた時期があったそうなので、もし今でも生きていたら島の人々の話でも聞いてみたいものだなと思いました。
最後に話は変わりますが、我が家の2020年、初詣は奈良に行ってきました。
子どもたちが薬師寺でひいたおみくじには「福枡」と、「福よせ熊手」のかわいい小物が入っていました。福の多いしあわせな一年となりますように。